先週気になった記事: 韓国LINEの社内辞書 LINE Words

engineering.linecorp.com

これは、LINE社が技術関連コンテンツを公開しているウェブサイトLINE Engineering 韓国語版のBlogに投稿された記事で、LINEの韓国チーム(と呼ぶのかはわからないけどここではそう書かせていただきます)がつくったLINEの社内辞書のウェブサイトとChrome extensionについて紹介されています。記事を書いたのは実際に辞書の作成に取り組んだLINE CLOVAチームのテクニカルライター 강정일さん。

グローバル企業であるLINEさんですが、従業員もユーザーも日本の割合が多いことは知られていると思います。LINE社内の文化にも日本の影響があるようで、記事の冒頭では社内で使われている言葉「MTG」についてこのように書かれています。

Google에서 검색해 보니 매직 더 개더링(Magic: The Gathering)이라는 게임이 제일 먼저 나오네요. 그런데 이 말을 LINE에서는 회의(meeting)를 의미하는 말로 많이 사용합니다.

GoogleMTGと検索したらマジック・ザ・ギャザリングが一番に出てくるけど、LINE社でMTGは会議を意味する言葉としてよく使います。」と書かれています。たしかに日本では会議のことをMTGと書く人をまぁまぁよく見かけます。

そんな多国の文化が混じり合うLINE社で生まれた社内用語辞書の開発ストーリー、記事の内容を自分用にざっくりまとめました。

NAVER社の翻訳機 Papagoと自分の韓国語力(弱い)と周辺知識をもとに意訳しています。訂正の指摘等は twitter @mt_dew2 までお願いします。

↓ここから記事の意訳


社内用語辞典 LINE Words オープン旅情期

元記事: https://engineering.linecorp.com/ko/blog/glossary-project-line-words-open/

なぜつくったのか

  • グローバル企業のLINEは社内でいろんな国の文化が混ざり合っているため、用語を明確に定義してみんなに共有することが重要だと考えた
  • COVID-19の影響でリモートワーク化が進み、以前のようにわからないことがあったときそばにいる誰かにサッと聞くことが難しくなった
  • 元々社ポータルサイトWikiはあったが、用語を探したい人が見るのに適した内容ではなかった

つくったもの

  • LINE Wordsという社内用語辞典のウェブサイト
  • 社内Wikiで動作するその辞典のChrome extension

つくるまでの計画

  • はじめは、この用語辞典を新入社員向けの小冊子としてつくろうとした
  • 用語と説明をいつでもまとめて見たりファイルで出力したりできる機能と、ブラウザから知らない用語の意味を調べられるようにChrome extensionをつくろうとした

まずコンテンツの流用過程と用語辞典の構造を確立した

  1. 社内職員を対象にアンケートを行い、その結果をもとに用語別の優先順位を決め、作成する用語を選定
  2. 他の組織や職員が整理した既存の用語集を収集
  3. 選定した用語・収集した用語を再作成したりコピーしてデータベースに保存
  4. データベースに保存されたデータを活用して本の出版用ファイルをつくる
  5. データベースからいつでも独自出力用ファイルを生成できるようにする
  6. Chrome extensionを活用してブラウザから用語の意味を確認できるようにする

以下のようなことを悩んだ

  • 用語作成/配布の優先順位の基準はどうやって決めるのか?
  • 用語データにはどんな内容をどんなフォーマットでいれるのか?
  • 用語作成環境に何を使ってデータベースにどんな技術やツールをつかうのか?
  • 用語コンテンツをデータベースにのせたりデータベースからデータを照会して必要な結果を作成するとき、どんな技術やツールをつかうか?
  • 用語辞書の小冊子の各ページに用語データをどうやって表示(スタイル・レイアウト)するのか?
  • 用語の説明はどんなプロセスで作成し、内容はどうやって検証するのか?
  • 用語はどのくらいの量作成するのか?どんな用語をサポートするのか?
  • 用語の説明はテクニカルライターだけが作成するのか?
  • 用語辞書についてフィードバックをどうやって受け付けるか?
  • 出版印刷と広報はどうやってやるのか?

議論した結果以下のようになった

  • 用語制作環境には意見を円滑にやりとりする点を考慮して、LINE社内の協業ツールであるWikiを使用する
  • データベースはheadless CMSの社内ツールLandPress*1 Contentを使用する
  • 作成したコンテンツを制作環境からLandPress Contentに移すためマイグレーションツールを作る
  • LandPress Contentから用語コンテンツを持ってきてOOXMLフォーマットに変換したあとMicrosoft Wordのような出版印刷用ファイルをつくる変換ツールを開発する

一旦開始

たくさんのことを決めなければいけなかったが、その中でも用語辞書にどんなデータフィールドが必要か決めるのが重要だった。用語辞書には用語の説明に必要なデータフィールドだけではなく用語の整列とフィルタリング、管理に使うフィールドも入れなければならなかった。

以下のようにデータフィールドを定義した。

  • 用語の名前(タイトル)
  • 略語
  • 説明
  • 参考資料
  • 関連語(一緒に見たらいい用語)
  • 言語
  • 国別名称(同じ対象を国別に違う用語で呼ぶ場合)
  • 検索用キーワード

データフィールドを定義したあと、このデータをどのように作成しデータベースに保存するか悩まなければならなかった。みんなで協力して(レビューを受けながら)やるために、グループウェアで使用しているWikiを使うことにした。 Wikiのコンテンツはそのまま冊子にしたりChrome extensionで利用したりするのが難しかったので、内容をデータベースに移す必要があり、マイグレーションツールを作成して、あらかじめ定義したフォーマットに合わせ、LandPress Contentにデータを移した。

計画変更

もともと新入社員向けの冊子として出版予定だったこの辞書は、社内だけで活用すべき情報をオフラインで流通することになり、セキュリティの問題を引き起こす可能性があるという意見がでた。検討した結果、出版物でなくVPN環境でのみ動作するウェブサイトとChrome extensionを提供することに目標を修正した。

その結果、LINE WordsウェブサイトとLINE Words ChromeツールはリアルタイムでWeb APIを呼び出しデータを表示することになった。当初計画していた実物の辞書のような可愛らしいギフトのようなテイストは諦めたが、次のような長所もあった。

  • ウェブサイトが提供されたことで用語辞書のアクセシビリティが向上
  • コンテンツを常に最新の状態に維持でき、いつでも誤りを修正できる
  • Slackを使ってフィードバックを受け付け、ユーザーの意見を収集しやすくなった

悩み

用語辞書を有用なツールとして生き残らせるために、良質なコンテンツを確保することが重要だ。ユーザーが探す用語が辞書に存在するか、説明がどれだけ満足感のあるものなのかが辞書が使い続けられるかを決める。良質なコンテンツの確保に関していくつかのイシューがあった。

1つ目に、用語の量と質の関係。用語数を増やすのと同じくらい品質も重要で、この適切な妥協点を探している。現在は各部署の協力を得て、用語草案は関連ドメインに属する部署で作成し、その草案をテクニカルライターが再編集する方式で進めている。 このような努力に支えられ、この問題をある程度解消できると期待している。試行錯誤中。

2つ目に、扱うドメインが多いこととドメインによってユーザーの知識に差があったこと。各ドメインに専門用語がありユーザーがどのドメインに属しているかによって、作成した説明が十分だったり不十分だったりする。これを解消するために、他の組織や他の職務の同僚との協業経験が多い人にレビューを依頼するなど、バランスを取るために努力している。

3つ目はテクニカルライターという立場で既存業務と用語辞書のコンテンツ作成業務を並行しなければならなかったこと。ドメインについて十分に理解して技術文書を書くテクニカルライターの業務と、短いスパンで複数のドメインを行き来し辞書のコンテンツを作成する業務を同時に進めることは簡単ではなかった。

このような悩みはあるが、用語のコンテンツを確保することは辞書の核心であり、今後のために必ず必要な目標だと考えている。達成するために絶えず努力中。

結び

2022年4月8日、約1年間かけて準備した用語辞典を公開した。今回の公開は韓国オフィスだけが対象だったが、オープンした後は用語追加のリクエストと多くのポジティブなフィードバックがあった。社内ポータルにも多くの人が歓迎のコメントをしてくれて「まだ不足しているが、本当に必要なサービスをつくったんだな」と感じた。

現在も継続してフィードバックを受け改善中で、次回公開するテーマも準備している。改善のために、ウェブサイトを分析した情報を集めたりもしている。今回は韓国オフィスを対象にしたが、ウェブサイト・Chrome extension ともに英語と日本語をサポートする準備を進めている。支援する言語が増えると、特定の国だけで通用する用語をどうするかについての問題が発生するが、それも十分に考慮して準備し、LINEの全てのオフィスに公式オープンし、全職員がLINE Wordsを利用できるようにする計画だ。グローバル企業で協業するどのLINERも用語の意味がわからずコミュニケーションで不便を感じないようにすることがLINE Wordsの目標だ。


↑記事の内容はここまでで終わり。

わたしも現在国内外にサービスを展開する企業で働いています。国内・国外の同僚と一緒に働く中で言葉の解釈の差によるコミュニケーションの難しさを感じることはよくあります。また、日本語版・英語版のサービスをつくる中でそのソフトウェアのUIやサポート用などのコンテンツのライティングに関して課題を持っています。このLINEさんの社内辞書は、国や文化の違いによるコミュニケーションの課題を解決するためのナイスな取り組みだと思いました。LINE Wordsの今後を楽しみにしています!

*1:LINEの静的サイトジェネレーター www.youtube.com