ウィズコロナのお通夜

友人が亡くなった。入退院を繰り返しながら何年も闘病していて、少し前に「最後の入院になる」と言って、それがそうなった。

通夜は地元の駅近くの斎場で行われた。地元の友人と待ち合わせて会場に向かった。受付を済ませて待合室に行くと、会議室のようなテーブルとやや間隔を広めに開けて配置された30脚ほどの椅子があった。その席に座って開始を待つ。後から来た参列者は待合室の外で列をつくっていた。

「僧侶が入場します」とアナウンスが聞こえて、あたりを見回すと待合室にある24インチくらいのTVモニターに故人とその家族がいるメイン会場が映し出されていた。読経が始まる。新型コロナウイルス感染症予防対策のため、一般参列者はメイン会場に入ることができず、待合室から中継を見た。開始から数分経つと、待合室の参列者が斎場の人に促され席を立ち、メイン会場のあると思われる方面へ向かい、3列になって並んだ。並んだ列の先で焼香をしているようだった。

自分の順番がきて焼香台の前に立ち、故人の遺影を見たら古い記憶が蘇った。メイン会場は焼香台の先にあり家族がこちらに身体を向けて座っていた。焼香を済ませ列から外れると、会場の人にいわゆる会葬御礼的なものを渡され、そして出口へ促された。

コロナ禍「焼香のみ」の参列はずいぶんあっさりしたものだった。私の故人への思いはやや宙ぶらりんになった。一緒に参列した友人と「あっさりしてたから泣かずにすんだね」と話しながら帰った。