AccessReadingについて

所属している会社の福利厚生の一環で、日本のとある高校で情報の授業と絡めた(絡めたい)アクセシビリティの授業をやる計画がある。それに関連して最近は障害のある学生向けの支援の情報を集めてたり。

その中で知ったのが、読むことに困難のある学生のための音声教材を提供するAccessReadingだ。

accessreading.org

「AccessReading(アクセスリーディング)」は、 読むことに困難があり、特別支援を必要とする児童生徒のためのオンライン図書館です。 東京大学先端科学技術研究センター社会包摂システム分野と、同大学図書室が共同で運営しています

www.youtube.com

「読むことに困難があり、特別支援を必要とする児童生徒」やその保護者・教員等が登録・利用申請することでAccessReadingが持つ教科書のデータを音声読み上げ可能なdocxとEPUBの形式でダウンロードすることができる。 データを配布するだけでなく、その使い方を細かく説明するページもある。やさしい。

なかでも、教職員等関係者向けの手引きがすごい、やさしい資料で 「音声教材配信手引き―通常学級担任、通級指導学級担任、教育委員会向け―」(PDF)

この文書について冒頭でこのように説明されている

この手引きは、音声教材が読み困難の児童生徒の手元に届くまでに、関係者がどのように行動すればよいのか、その行動指針を示したものです。

ただ単純に、教材を授業に活用する手順書なのではなく「音声教材が読み困難の児童生徒の手元に届くまでに関係者がどのように行動すればよいのか」が書かれているのがすごく優しい。この手引きのスタートは「音声教材をダウンロードした」地点ではなく「教科書を読むのに不便がある生徒がいる」地点なのだ。そのような状況で、本人(生徒)はどのようにこの支援(音声教材)の活用にたどり着くのか、学校関係者はどのようにサポートできるのか、どのように話し合い当事者の困難を理解していくのか。そういうことが詳細に、丁寧に、わかりやすい言葉でまとめられている(ToT)

円滑にサポートするためのインフォームド・コンセントの重要性についても書かれているし、実際にこの教材を使っている現場からの声をもとに具体的な困りごととその解決事例が紹介されている節もある(ToT)

もし、このような支援を持つ子を持つ親の立場だったら。学校側がこの手引きを理解してくれ、この手引きに沿ったサポートをしてくれるというならどれほど安心できることか。

もし、支援が必要な生徒を抱える教師の立場や、教育関係者の立場だったら。生徒をどのようにサポートしたらいいかとても悩むと思う。そのときにこの手引きが大きな助けになると思う。

子供の教育環境については、周りの大人が左右することが大きすぎると思う。子供だけで環境をコントロールするのは難しいだろう。周りの大人がこの手引きにあるように、本当に寄り添って理解し支援するための行動をとることが必要不可欠だ。

私は今回調べて初めてこのような支援があるのをしったのだけど、これが必要な人にちゃんと届いているのだろうか?届いているなら最高だし、届いてないなら残念だ。このへんの当事者の方々の実際の環境については本当に何も知らないので何も言えない…。

AccessReadingのウェブサイトでは活用事例が紹介されていて、このツールを導入するときの話や、実際にどのようにこの教材を活用しているか、この教材の他にどんなツールを使って学習しているかが書かれている。

accessreading.org

ある生徒さんの事例で、この教材を導入するための相談の際に感じたこととして

「・肢体不自由の支援学校なので、『みんな書けません、読めません。それぐらい読めてれば…書けていれば、使わなくてもいいのでは』という先生方の考え方が根強く、本人の辛さを理解してもらいにくかったことと、どう使うのかを先生方がイメージできないため、音声教材や機器を使うことを大変な事こと、難しいことと捉えられてしまっていたことが大きかったです。 https://accessreading.org/AR_case02.html

と書かれていた。支援学校の先生でさえそのような考えだったんだ。そういう先生たちがいたり、他にもいろんな困難があったり、いろんな準備が必要だったんだろう。そういう環境で当事者と理解のある担任の先生と協力して、導入にたどりつけた…のかもしれない。みたいなストーリーを想像した。この導入事例は苦労話じゃないのでこういう想像はあんまりよくないのかも?でも「支援策の理解に関する支援」が必要なのでは?と思った。

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